第3 第三者への売却(M&A)

(1)会社売却 

M&A(合併merger と買収acuisition)は要するに社外の第三者に会社・事業を売却することです。上述の親族外承継と重なる部分もありますが、ビジネス、取引として行うことを前提としています。

 M&Aといえば大企業のものという時期もありましたが、現在では中小企業もM&Aをりようするようになっています。

 M&Aの具体的な方法として、①株式の譲渡、②株式交換、③合併、④事業の譲渡、⑤会社分割といったものがあります。

(2)①株式譲渡 

 会社の支配権を表象する株式を売却することで、会社の支配権を移転させます。書いての第三者が株主となるもので、移転によっては会社の組織や従業員に変更はありません。

(3)②株式交換 

 株式交換は会社が自社株式の全部を他の会社に取得させることをいいます(会社法2条31号)。交換先の会社は対価として、株式や金銭を交付します。売り手の会社は交換先会社の完全子会社となります。

(4)③合併 

 合併は複数の会社が一つになるものであり、吸収される会社の権利義務は合併後の会社に承継されます。会社を丸ごと売却する方法となります。

(5)④会社の一部売買(事業譲渡)

 事業譲渡は会社自体でなく、会社の行う事業単位で譲渡するものです。「事業」の譲渡であるため必ずしも権利義務関係の承継はなく、買い手側が不要と判断した資産や従業員については引き継がれません。

 事業譲渡利用のメリット・デメリットを検討しましょう。

  事業譲渡の手続きの概要は以下のようになります。

❶対象事業の評価:譲渡する事業を選択したうえで、その事業の価値を評価します。

❷覚書き:譲受会社との間で基本的合意事項につき覚書を締結します。そして、譲渡対象範囲、価額、時期、労働契約承継の時期、債務引き受けの有無等の詳細について交渉します。

❸契約締結:交渉により合意に至れば、契約を締結します。

❹内部承認:取締役会設置会社で「重要な財産の処分」には取締役会の承認が必要です。また、「事業の全部の譲渡」、「事業の重要な一部の譲渡」には株主総会の特別決議が必要です(会社法467条1項1号、2号、309条2項11号)。重要かどうかは事業の価額と会社総資産に占める割合等により判断されます。

❺株式買取請求:事業の譲渡は会社の財産状態を大きく変動させるため、反対する株主の保護手続きが設けられています。事業譲渡しようとする会社は株主への通知が義務付けられ(会社法469条3項)、反対株主は会社に対して保有する株式を適正価格で買い取ることを請求できます(会社法469条1項)。

❻譲渡契約の履行:契約で定めた事業用資産、承継の合意がなされた労働関係につき移転の手続きを行います。資産については、物ごとに権利移転をする必要があります。労働関係については当然井は引き継がれず、各労働者との個別合意で譲渡会社退職と譲受会社入社を行います。

❼残余財産処理:事業を譲渡した会社は、残存する事業をおこなうことができます。残存する事業がない場合には、新たな事業を始めるか(会社法21条の競業避止義務に注意)、解散の手続きをとって会社を消滅させるかします。解散における清算手続では残余財産を株主に分配することになります。

(6)⑤会社分割 

 会社分割は複数の事業部門を持つ会社が、特定の事業について切り離し別の会社とするものです。M&Aの前提として分割が行われ、売りたい事業部門だけを切り離して、権利義務関係ごと売却することができます。
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