Ⅳ 法的倒産手続きと自社債権の行方

次に実際取引先が法的倒産手続きを開始した場合に従前の取引にどのような影響を及ぼすかについて説明していきます。
双務契約(双方相手方に対する債務を負担する契約)においては次の3つの場面が想定できます。

①契約当事者の一方が債務を履行したが、もう一方が債務を履行していない場合
=一方未履行

(例)売買契約で当方の会社が商品を引き渡したが、売買代金は支払ってもらってない場合
② 契約当事者双方が、自己の債務を履行していない場合
=双方未履行
(例)契約書に調印したが、お互い何もやっていない。
③当事者双方が債務の履行を完了した場合
(例)商品も引き渡したし、売買代金も受領済みであるという場合

上記の内、倒産手続きが開始した場合、③の状態であれば円満に契約関係が終了しておりますので、問題となるのは①一方未履行、②双方未履行の状態の時です。

1 破産以後、一方未履行の契約関係はどうなるか?


(1)C製靴店がD靴店に商品を納入したがDが代金を支払う前に破産手続きに入った場合

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この例ではCD間の靴売買契約のCさんの商品引き渡し債務は履行済みですが、Dさんの代金債務は未履行です。
これを一方未履行の双務契約といいます。
この場合、債権者のCさんに有利になることはありません。

CさんのDさんに対する代金請求権は破産債権となり配当手続きで弁済が受けられるに過ぎないということになります。そして、配当もゼロということが多いのが現実です。


(2)逆に、C製靴店がD靴店に商品を納入したがDが代金を支払う前に製靴店のCが破産手続きに入った場合


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この場合にはD靴店は買掛金をCさんの管財人から請求されることになります。
D靴店は商品を受領しているので支払いをしても特に不利にはなりません。


2 破産手続き以後、双方未履行の契約関係はどうなるか


(1)C製靴店とD靴店は靴売買の契約をしていたが、Cが靴を納入する前、Dが代金支払う前にDが破産した場合


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この双務契約における双方未履行の契約関係の帰趨は管財人がイニシアティブを持つことになります。
管財人が破産者であるDさんにとって有利な契約(高値で転売先が決まっているなど)であると判断すれば、Cさんに靴の引き渡しを請求して代金を支払います。


(2)債権者から契約解除はできるのか

ではこの場合に、製靴店Cから契約の解除はできるのでしょうか?
法定解除については、Dさんに債務不履行がある場合、すなわち債務者靴店Dの代金が未払いになっている場合には、Cさんから解除することができます。

合意解除(当事者の契約に基づく解除)はどうでしょうか。合意解除についても、債権者Cさんから解除することは可能です。ただし 、倒産解除条項(倒産を申し立てた事を解除事由とする特約による解除)は無効であるとされています。
その理由は、管財人に契約関係を維持するかどうか選択権を与えた破産法の趣旨に反するからです。

結局、破産手続きに入られると、担保・保証がない裸の債権については配当を待つしかないといえます。そして、配当がある場合は稀なのが現実です。

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