3 問題事例①~供給者の出荷停止~  

(1)事例

継続的契約においては相互の信頼関係が前提となっており一回きりの契約とは別途特別な規制を受けることがあります。

私共東大阪事務所においては特に中小企業集積地であり、製造業が多く集積されているためこの継続的契約が問題になることが多々あります。

例えば:AはBと材料の仕入れ契約をしているところ、仕入れ先Bが来月から単価を倍にしてくれないと納品できないというような無茶な主張をして事実上取引関係を拒絶するような(多くは大手が中小企業に対して高圧的に主張する事が多いのですが)事態がままあります。

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(2)継続的契約の構成・性質 

このような理不尽な主張に対する対応策については継続的契約の構成・性質を検討しなければなりません。
継続的契約については多くは製造物供給契約や商品供給契約など基本契約が存在し、さらに個別契約が締結されることが通常です。

基本契約とは、その契約関係の大綱を定めたもので、個々の契約(個別契約)の締結を予定して結ばれる総括的内容の継続的契約です。

基本契約の取引条件は、その都度特約しない限り、個別契約の取引条件となるのですが、契約当事者は当然に個別契約の締結義務を負うわけではありません。

個別契約は「A商品を50個・納期1ヶ月後」など具体的な権利義務を決める契約です。

ただ個別契約については契約書を作成することの方がまれで、大体見積書を出して了解を得る、メールFAXで発注書をだす等、簡易なやりとりで成立していることの方が大多数です。

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(3)継続的契約の類型

継続的契約は以下の類型に分類できます(中田裕康教授著「継続的売買の解消」p473)
   

【1】包括的な継続的売買契約から直接具体的な供給義務が発生するもの

【2】具体的供給義務は個別契約の成立によって発生するもの

(ア)個別契約は被供給者の一方的意思表示により成立するもの

(イ)個別契約は被供給者の申込と供給者の承諾により成立するもの

①形式的には供給者の承諾が必要であるがすでに形骸化しており,被供給者の意思表示によって成立するのと同視しうるもの

②個別契約の成立には供給者の現実の承諾が必要であるが,供給者は特段の事情ない限り承諾する義務を負うもの

③個別契約の成立には供給者の承諾が必要であり,供給者は個別契約の申込があったときには誠実に交渉する義務を負うが承諾義務までは負わないもの


(4)事例の検討

冒頭の仕入れ先BからAに対してなされた「来月から単価を倍にしてくれないと納品できない」というような無茶な主張について上記類型を用いて検討してみましょう。

例えば、発注側A(被供給者)が通常注文書をFAXすれば仕入れ業者B(供給者)が何ら応答せずとも納期に納品されるような取引が継続していたのであれば上記(イ)①に該当します。

そうすると従前の単価における個別契約が成立していると考えられるためBの倍額の単価要求は新たな個別契約の申込みに過ぎないという事になります。

すなわち、この場合AB間においては旧単価に従い商品を供給する個別契約が成立しているためAは旧単価に基づいて発注すれば良くBの新たな個別契約を受諾する義務はありません。

逆にBは旧単価に基づく材料の供給義務を負っており、これに従ったAの発注を拒めば契約違反(債務不履行責任)に基づく損害賠償責任、具体的には供給停止に基づく逸失利益の損害賠償責任を負うことになります。


(5)参考裁判例

裁判例においても、継続的契約において正当な理由なく取引を停止した当事者に、債務不履行責任を認めたものがあります。

ア 大阪地裁昭和47年12月8日

【事案】

原告:供給者X (流し台用シンク製造業者)

被告:被供給者Y (流し台製造販売者)

XとYはシンクの継続的取引契約を締結した(期間の定めなし)。


しかし、XがYの代金支払い遅滞を理由に3か月にわたり出荷制限、その後取引停止した。


Xが代金支払い請求をしたところYは出荷制限及び取引停止の債務不履行により損害を被ったとして損害賠償請求権による相殺を主張した。

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【判断】

Yの代金支払遅滞はXの納品の遅れによるものであり違法はない。

よって,Xの出荷制限及び取引停止について債務不履行がある。

本件基本契約は個別的売買契約の申し込み・承諾を義務づけられるものと解され,取引停止は継続的取引契約上の債務の違法な不履行に該当するとして,Yの損害賠償請求による相殺の抗弁を認めた。

この裁判例では供給停止の違法性について、期間の定めない継続的売買契約における被供給者Yの中心的義務である代金支払の債務不履行は、Xの供給の遅れという相当の理由が有り違法性を有しないとしています。

これは仮に代金支払いの遅滞が違法な債務不履行にあたる場合には供給停止が違法な債務不履行でないことを示唆するといえます。

当該裁判例に照らして問題事例①について考えると、事例の契約は類型イ①に当たるところ、供給者が「単価を倍増しない限り今後供給しない」として取引を停止した場合、特に被供給者に代金支払いの遅滞等の事情もないので、裁判例におけるように代金支払いの不履行の違法性を検討するまでもなく、供給者の取引停止は債務不履行となるでしょう。

イ 東京地裁平成3年7月19日

【事案】
原告:被供給者X(医薬品等販売業者)とする。

被告:供給者Y(医薬品等製造業者)とする。

XとYとは医薬品の継続取引契約(1年ごとの期間・更新の約定有り)の下取引をしていたが,Yが供給停止したためXは逸失利益の損害賠償請求を求めた。

これに対してYはXとの取引が採算に合わないことを理由に解約申し入れしたと主張した。

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【判断】
Yの解約申し入れの事実を認めず,更新期限である1年分の逸失利益の賠償を認めた。

 

この裁判例では供給停止に基づく損害賠償請求が問題となっており、期間の定めのある契約に関して参考になります。

問題事例①で仮に契約の期間・更新期間の定めがあれば、取引停止の時期から当該期間までの取引で得られたはずの利益を逸失利益として、債務不履行に基づく損害賠償請求が可能です。

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