保険法改正


1 保険法改正による「介入権」

 平成22年4月1日から施行される保険法では、保険金受取人による契約の存続(介入権、保険法60条2項)を認めるという大改正がありました。この改正法は、平成22
年3月までに締結した保険契約にも適用されます。
 介入権の具体的内容を説明します。
 保険契約者の債権者などが保険契約を差し押さえて、保険契約の解約を生命保険会社に請求することがあります。このような場合に、保険金受取人は①契約者の同意を得て、②解約請求権の通知が生命保険会社に到達した日の翌日から1か月以内に、③解約返戻金相当額を債権者などに支払うことによって、保険契約を存続させることができるようになりました。
 ただし、この介入権も万能ではありません。そのことを示す事案を紹介しましょう。
⇒事案4

2 事案4

(1)事案の概要


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<経緯>
①妻を受取人として保険契約を締結。
②会社が傾き、社長は税金を滞納してしまった。
③税務署が、社長の生命保険の解約返戻金を狙い、保険会社へ解約権が行使された。
 社長は破産申し立てをした⇒社長が破産をしても、原則99万円までは財産を保有できる(場合によってはそれ以上の額も可能。生命保険の形で残すことも可能。なお、同時廃止は、原則20万円)。
④ところが、生命保険受取人を、配偶者にしており、生計を同じくしていたことから、介入権を行使することができなかった。
⇒保険は解約されてしまった。
<本事案のPOINT>
受取人を生活の収支を同じくする配偶者にしていた。

 

(2)解決策

◎受取人を確認する(保険内容の確認、見直し)。
◎リスクヘッジとして、生計を同じくしていない人を受取人とする保険契約を締結しておく。=解約請求されたときに、健康を害していると、保険に加入できない。⇒老後が心配。

3 保険法改正による保険金受取人の遺言による変更

 平成22年4月以降に締結した保険契約について、遺言による保険金受取人の変更(保険法44条1項)が認められるようになりました。
 その内容は、契約時に定めた保険金受取人の変更方法について、新たに「遺言による方法」を加えるというものです。
 そして、遺言で受取人を変更するためには、①契約者が被保険者の同意を得ていること
、②法律上有効な遺言であること等が必要です。
※生命保険会社に変更の通知(遺言の場合、相続人が通知)が到着する前に、変更前の受取人に保険金が支払われてしまった場合は、変更後の受取人から請求されても保険金を支払う必要はありません。
 以下では、この改正に関する事案を紹介します。⇒事案5

4 事案5

(1)事案の概要

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<経緯>
①父は、生前同居・老後の面倒を見るということを条件に、息子に全ての財産をそうぞくさせるという内容の遺言書を作成した。また、息子を受取人とする生命保険も契約した。
②ところが、同居を始めると、父と嫁との折り合いが悪く、また息子からもひどい言動が日常的になされた。
③父は息子との親子の縁を切ることを希望。
④遺言書を書き換えて太郎に財産(生命保険受取人を変更)をいかないようにした。
<本事案のPOINT>
親子の縁は法的には切れない。

 

(2)解決策

◎遺言で本当に面倒を見てくれる人を受取人に変更しておく。
 =実質上、縁を切る方法を採る。
◎本当に面倒を見てくれる人を受取人とした保険を作ってもらう。

※1 遺言の種類とメリット
・種類 ①自筆証書遺言 ②秘密証書遺言 ③公正証書遺言
・メリット ア、僧億人の意思が実現される。イ、遺言執行者を決めておけば、速やかに手続き(保険会社にすぐに連絡し て、新しい受取人に渡せるなど)可能。
・お勧め ③公正証書遺言:偽造・紛失等の恐れが低いため
※2 なお、よほど虐待がひどければ、法的に相続させない方法をとることも可能です。
 例)相続人の排除
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